年を取ると共に嗜好が変わるのは、当たり前の事だろう。
実際、昔はナポリタンよりミートソースが私は好きだった。
でも、何時の間にか逆になっていた。
うどんより、蕎麦が好きになっていた。
チャーハンより、ラーメンが好きになっていた。
中華ソバとは違うので、そこは注意して欲しい。
とまあこんな感じで、色々と好みや考え方が変わったのである。
ツーリングに関しても、そうだ。
私がツーリングや野宿に興味を持ったのは寺崎勉という人の書いた本を読んでの事なのだが、この人の本に影響された私は、初めてのツーリングでもキャンプ場には泊まらず、適当な場所を苦労して探し出し野宿を行った。
一泊程度ならわざわざ米など持って行かずとも食事はインスタントラーメンで十分なのに、それでも米を炊いて食事をした。
オカズは勿論、サンマの蒲焼の缶詰である。
こんな感じで野宿に拘っていた私だが、初めて北海道へツーリングに行った時に、初めてキャンプ場に泊まった。
なんて楽なんだと、心から思った。
何しろ、蛇口を捻れば水が出るのだ。
地面が平らで、ボコボコしていないのだ。
クソをするのに、穴を掘る必要がないのだ。
そりゃあ、楽に決まっている。
こんな感じでキャンプ場の利便さを思い知った私は、それからツーリングではなるべく無料キャンプ場に泊まるようになった。
とにかく、楽なのだ。
季節を外し、無名の小さなキャンプ場に泊まれば、人っ子一人おらず貸切状態になったのも、拍車を掛けたのだろう。
人のなるべくいない無料のキャンプ場である事に拘ってはいたが、とにかく昔の私にとって、キャンプとはただ寝るだけの、ツーリングの“ついで”でしかなかったのだ。
そんな私だったのだが、最近は考えが変わった。
キッカケは、このサイト。(ツーリングライダーには、絶対お勧め!)
で、思った訳だ。
キャンプそのものを楽しんでも良いのではないか、と。
何しろ世のキャンパーは、大抵キャンプそのものを楽しんでいる。
そういったキャンパーは家族連れが多いのも確かだが、それでもその人達は、食事を作る事を楽しんだり、焚き火を楽しんだりしている。
で、自分も試して見ようと思った訳だ。
今度のツーリングでは、キャンプそのものを楽しんで見ようと。
その為に、背もたれ付きのイスを買った。
タープも買った。
エアマットだって買った。
ホームセンターで購入した背もたれ付きの折り畳みイス以外は高くついたが、これでも私は社会人。
自由になるお金は、それなりにあるのです。
という訳で、今回目指すのは本州最北の地、「青森県」。
八泊九日の旅であり、キャンプそのものを楽しむ事が、今回のツーリングの目的の一つである。
その為なら有料のキャンプ場だって泊まっちゃうゼ。
でも五百円以上は勘弁な。
いんちょのツーリング日記
青森県編
その1
2008/6/25 晴れ
今回は青森まで自走である。
長距離の自走は、五年前の京都以来だ。
でも、その時は約八時間。
今回は、予想では約十二時間。
実に1,5倍である。
休憩込みだが、ちょびっと憂鬱である。
AM1:00に出発した。
で、2:00には東北道の最初のSA(サービスエリア)に到着し、3:30に上河内SAに到着した。
何気に、宇都宮餃子が美味そうだった。
だが、この時間では当然店は閉まっている。
帰りは、ぜひ寄ろう。
そんな事を思った。
高速で迎えた夜明け |
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高速で夜明けを迎え、それがとてもキレイだったので、思わず写真を撮った。
この写真では、その美しさが全然伝わっていないが……ま、気持ちだけ。
というか、暗いだけ。
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6:30 宮城県の菅生PA(パーキングエリア)に到着。
出発してから、約五時間半。
さあ、ようやく半分だ。
8:30 岩手県の前沢SAに到着。
岩手県の前沢といえば、前沢牛が有名だろう。
せっかくだから、俺はこの「前沢牛ステーキセット」を選ぶぜ!
という訳で、\4,500もしたがツーリングの時くらいは贅沢もありだろうと、朝っぱらから何だがステーキを朝食とした。
でも有料のキャンプ場はなるべく避ける、私である。
それはともかく、本当は「前沢牛がっつり丼」というのを食べたかったのだが、モーニングではやっていなかった。
残念。
味は普通に美味かった。
疲れもあって、つい店に置いてあった「美味しんぼ」を読みふけってしまい、出発したのは10:00である。
で、青森県に入り、高速を降りたのが13:00。
十二時間を走り切り、ようやく私は本州最北の地、青森県に到着したのであった。
嗚呼、疲れた。
今日の宿泊予定地の候補は二つ。
無料の「岩木山桜林公園」(正確にはキャンプ場ではないがキャンプOKの公園)と、有料の「アクアグリーンビレッジANMON」という施設内にあるキャンプ場(\500)である。
有料の方には、敷地内に温泉があったりする。(温泉は別料金)
本来なら迷う事なく桜林公園の方を選ぶのだが、今回は別。
というのも、今回のツーリングの目的の一つが、そこの近くにあるからだ。
それは世界遺産。
その名も「白神山地」である。
1993年に自然遺産として登録された青森県の南西部から秋田県北西部にかけて広がる山地のことで、人の手が加えられていないブナの原生林からなる地域である。
以前、酸性雨で白神山地が徐々にヤバイと新聞で読んだ事があり、なら本格的にヤバくなる前に一度くらいは行ってみようかと思ったのだ。
そんな訳で今日の宿泊地は、世界遺産のパワーを肌で感ずるべく、白神山地のすぐ傍にあるアクアグリーンビレッジANMONで決定である。
岩木山 |
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蝦夷富士と言われる岩木山。
バリバリの曇で、間もなく雨という雰囲気。
というか、実際に走っている途中で降られた。
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岩木山を横目にひた走る。
ライダーご用達のマップ「ツーリングマップル」に、林檎の木が鈴鳴っている道「アップルロード」は走るのにお勧めとあったので、少し遠回りになるものの、アップルロードを走ってみた。
だが林檎の木も、林檎が生っていなければ、ただの木だった。
林檎の木 |
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アップルロードでの、とある林檎の木。
この写真では本当にただの木にしか見えないが、一応林檎は生っているのだ。
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実に当たり前の事である。
雨にも降られ、気分は結構ブルーだった。
パラパラと降っていた雨も止み、14:00「アクアグリーンビレッジANMON」に到着した。
\500を払って、受付を済ませる。
で、受付の人に色々聞くと、何やら修理中だか改装中とかで温泉施設は閉まっているとの事だ。
ちょっぴりショックだった。
……まあ、別に風呂好きではないので、良しとしよう。
温泉は別腹だが。
一っ風呂\500だそうだ。
キャンプ場内には、他にキャンパーが一人いた。
貸切でないのはちと残念だが、まあ良いだろう。
バイクで場内に乗り込み、テントを張るのに良い場所を探す。
ところでここのフリーサイト、地面は一応草地だが、石やら木の枝やらで、結構ゴツゴツしていた。
まあ、有料といってもこんなものなのだろう。
草地の所々に、焚き火跡が黒々とあった。
マナーがなっていないぜ。
ちなみに、キチンと区画整理されたオートキャンプエリアは\1,000だった。
ともあれ、早速タープを張る事にする。
いよいよ、タープデビューである。
すると、止んでいた雨が再びパラパラ降ってきた。
いやん。
そんな中、苦労しながらタープを張る。
汗をダラダラに流しながらタープを張るのに、なんと二時間。
テントを張り終えたのが、実に17:00。
疲れたあ……いや、マジで。
しかも、張り終えた途端、雨止むし。
もういやん。
テントを張った後、時間はまだまだあるだろうから暗門の滝に行こうかなあとか考えていた自分が、実に滑稽であった。
初めてのタープ |
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これは、私が初めて張ったタープの写真である。
タープの尾根がぐにゃりとなっているので、モロに初めてという事が分かるだろう。
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アクアグリーンビレッジANMON |
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で、ここが「アクアグリーンビレッジANMON」のフリーキャンプサイトである。
今から思えば、ロケーション的にも素晴らしい所だったように思う。
バイクで乗り込め、焚き火も出来る訳だし。
そりゃあ、少しくらい草地も荒れるさ。
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ロングで撮ってみた |
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ちょっとロングで撮ってみた。
傍には川も流れていたりする。
うん、やっぱり良い所だ。
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ところでタープはアレだったが、同じくニューフェイスのエアマットは広げてみたところ良い感じである。
あとは、実際に寝てからだ。
取り合えず、蚊取り線香に火を点ける。
だが火が点かない。
全部、湿っていた。
まあ一年以上前の物だし、考えて見れば当然だった。
ギャフンである。
幸い、肌寒い気候の所為か、蚊は見られない。
ダラダラの汗も、気付けば乾いていたし。
蚊取り線香は、明日コンビニで買えば良いだろう。
キャンプに虫除け対策は、基本必須なのだ。
という訳で、家から持って来た水道水を暗門の滝入り口にあるブナの森の湧き水とコソコソと入れ替え、準備は万端。
よって寝る。
疲れたので、一眠りである。
19:00 目覚める。
何というか、気分が実にかったるい。
メシを作るのが、とてもめんどい。
そんな訳で、まだ開いていた受付でカップラーメンを買って、それで食事を済ます事にする。
朝、食ったステーキとは大違いである。
もう、良いや。
一緒に買ったビールをくぴくぴと飲んで、もう寝てしまおう。
世界遺産のパワーだなんだは、もうどうでも良かった。
またこの時点で、食事を作る事そのものを楽しむとか焚き火を楽しむとかも、頭から消え去っていた。
思い返せば、実にマヌケである。
ああ、温泉入りたかったなあ。
それにしても、何とかタープは張ったものの、少し強い風が吹いたらアウトのような気がする。
たぶん、気のせいではないだろう。
……まあ、良いや。
ところで、この季節でも寝る時にシュラフは必須である。
エアマットの上に敷いたシュラフにごそごそと入り込む。
ふむ、こうしてみるとエアマットは良い感じである。
地面がゴツゴツしているので、銀マットとの違いがハッキリと分かる。
石がゴツゴツの川原などで野宿する時は、更に威力を発揮する事だろう。
破れたら、それまでだが。
ともあれ、エアマットは買って正解だったような気がする。
タープは、まだ分からない。
そんなこんなで、今日はもう就寝。
お休みなさい。
夜空は曇っていて、星は見えなかった。
その2へ続く
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