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レーザーとは
【レーザーは人工的に作った光】
レーザーは工業用や医療用をはじめとしてプレゼンのときに使うポインターなどに至るまで様々なところで
使われています。言葉としてもイチロー選手の捕殺の代名詞になっているレーザービームといった例えとしても
使われています。
このように生活の中に深く浸透しているレーザーですがその原理や特徴などは意外に知られていないのでは
ないでしょうか。
レーザーという名前自体、「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
(輻射の誘導放出による光増幅)」という原理を表す言葉からの由来であることもあまり知られていません。
それではまず、レーザーとはそもそもどんな性質があるのかということから見てみます。
【レーザー光は拡散しない】
レーザーは光を増幅して位相や波長が揃った(コヒーレントな)光を発生させることができ、
その光は指向性に優れていて、単一の波長の光を保つことができます。
指向性に優れているということは長距離離れた先でも光が拡散せず、収束しているということで、
この性質はレーザーポインターや光通信、CDなどの信号を読むピックアップ、様々な加工技術に用いられます。
位相が揃っているということは光の周期性が長時間狂うことなく、一定であるということです。
レーザーのもう一つの大きな特徴として、時間幅の短いパルス光が得られることです。パルスレーザーは
短い時間幅の中にエネルギーを集中させることが出来るため、高いピーク出力が得ることができ、
様々な加工技術や医療用機器として用いられています。
【レーザーの発振は電子の遷移から始まる】
「電子のエネルギー 」の項で説明したように、原子内にある電子は電子の存在できる軌道(殻)毎に
あるとびとびの状態しかとれません。
電子が内側の軌道に存在するときほど強く原子核と結合しており、電子は安定した状態にあるため、
K殻の電子のエネルギー状態は最も低くなります(基底状態)。
この状態から外側の軌道に電子が移ろうとする場合、電子はエネルギーを必要とします。
このエネルギーはどんなものでもいいわけではなく、外側の空いている軌道に移るのにちょうど必要なエネルギーを
持つ光や熱が加わったときだけ電子はエネルギーの低い状態から高い状態(励起状態)に移ります(図1)。
(図1)
しかし、電子は長く励起したままではいることができず、すぐに元の軌道(基底状態)に戻ります。
このとき電子はエネルギーの高い状態から低い状態に移ることになり、余分なエネルギーを光として放出します(図2)。
(図2)
このように電子は外側の空いている軌道に移るのにちょうど必要なエネルギーを持つ光や熱が加わったときだけ
電子は励起状態になりますが、電子がすでに励起状態にあれば、電子は自然に低い軌道に落ちてエネルギー(光子)
を放出します。この過程は自然放出と呼ばれます。
それでは電子が励起状態にあるときに適量な光子がやってきたらどうなるでしょうか。
電子は光子を吸収してさらに高い軌道に移るのではなく、電子は低い軌道に落ちて1個の光子を放出します。
やってきた光子は吸収されずに進み続けます。つまり、同じエネルギーの光子が2つになるわけです。
この現象を誘導放出(stimulated emission)といいます。
【レーザー光はいろんな媒質で作られる】
ただ、常温では電子が励起状態にあることは少なく、基底状態にあることがはるかに多いため、
強力な誘導放出を起こすためにはこの状態を反転させて励起していない電子より励起した電子を多くし
なければなりません。反転させるためには原子や分子にエネルギーを注入してより高いエネルギー準位に移します
(ポンピング)。
反転が成功すると、励起状態にある電子が基底状態に戻り、光子を放出します。
この放出された光子は他の励起状態にある電子の呼び水となって次々に光子を放出させます。
しかし、これだけでは光っているだけで光線は出ません。光線を出すには増幅が必要です。
反転を作り出す媒質(例えばルビー)の両端に2枚の鏡を向かい合わせておきます。
ポンピングにより反転したルビーに呼び水となる誘導光を加えると、ルビー内部では誘導放出が起こります。
誘導光はルビーを通り抜けてしまいますが、鏡に反射されてまたルビー内部に入っていって、
また誘導放出を起こすことになります。このようにして光子が再帰的に増幅されていきます。
増幅された光子は鏡の1つを光の一部が通過できるように半透鏡にしておけば、そこから一部の光を
外部に取り出すことができ、光線(レーザー光)が得られます。
このように「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(輻射の誘導放出による光増幅)」
という名前が示すとおり、同じエネルギー、波長を持つ光子が増幅されるのことによってレーザーの特徴である
単色でコヒーレントな光を出すことができるのです。
色や波長は用いる媒質によって異なり、赤色を出すルビーレーザーやヘリウムネオンレーザー、
青色や緑色を出すアルゴンイオンレーザーなどさまざまな固体、気体、液体が使われています。
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