随 想(思いつくまま)

(9/24) 合冊製本を終えて

「市民の意見」バックナンバーの合冊製本が一段落し、本日、事務局に届けた。製本の趣味にはまっている自分としては、市民の意見30の会の意見広告運動を手伝って以来、事務局の棚を占めるバックナンバーをいつかは合冊製本したいと考えていた。

 当会の発足は、冷戦構造が崩壊した頃までさかのぼる。今後の社会は如何にあるべきか、それは従来の強者の政治から弱者の政治に転換すべきだとして、30の項目に主張を絞り、新聞意見広告の形で世に提言したのを嚆矢とする。それ以来、反戦市民運動のニュースとしてその主張は先見の明に富み、一貫してぶれるところがなく、大きな役割を果たしてきた。しかし、皮肉な見方をすれば、主張は総じて実現されることなく常に負け犬の悲哀を味わってきたとも言える。先日の吉川勇一、武藤一羊両氏の“合わせて160歳を祝う会”で武藤氏が、「これまで言ってきたことは何一つ実現しなかった」という感慨を述べておられたが、ニュースに目を通しながら同じ感慨がある。合冊作業はこの世に生を受けことなく葬られた水子の霊を供養するに似た営為でもあった。

 歴史は偉人英雄が作ったとする史観がある一方で、裏に隠れて見えない庶民こそが主役であるとする考えがある。「市民の意見」編集スタンスは後者である。論文と一読者の意見は対等であるという方針が痛いほどよく分かる。合冊に当たってはその方針を極力貫きたいと思ったが、限界があった。また、「索引のない合冊は無意味である」という吉川氏の一言が目にウロコで、ジャンル別の分類を試みたが私の独断と偏見で甚だ心もとない。巻末にデータ収録のCDを付けたので、より良いものに改善されることを願っている。

 一足先に実現した“USB電子版”とは一味違う、紙の合本の捨てがたい良さに共感が得られればこれに越した幸せはない。         (2012,9,22記)