随 想(思いつくまま)

(9/11) 美ヶ原を訪ねる
 マイカーのラストラン
 台風18号は九州に上陸、中国地方沖海上を北東に向かっているらしい.最悪の場合宿から一歩も出られないかもしれないと覚悟しながら、かねて計画の信州行きを決行した.70歳過ぎたら車は運転しないと決めていたので、今月車検期間満了を機に愛車を手放すことにした.ならばラストランと長距離ドライヴ2泊3日の旅に出た.
 初日は蓼科坪庭へ
 蓼科の会員制ホテルに無事到着.近辺を漠然と走っていると、”坪庭”の標識が見える.「良い処よ」と言う妻の言に立寄ることとした.強風のためロープウエイが止った場合は歩いて下山して頂くことになりますがいいですかと念を押され、空中の人となる.雲の動きは低く早く、遠望は効かない.溶岩に高山植物が寄生する、奇なる景観が広がっている.観光客の姿は殆どない.
 俗化著しい女神湖、白樺湖を一回りして帰館.
 落石のため通行止め
 ビイナスラインの名に恥じない霧が峰高原の景観を満喫、和田峠に到着した.その途端、「落石のため通行止め、美ヶ原へは和田村役場前からの道へ回って下さい」と看板が立っているではないか.危惧していた台風の影響が現実のものとなった.曲がりくねった旧道(後で判ったのだが中山道筋に当たる)を下り、「美ヶ原へ」の大きな看板に安堵の胸をなでおろした.民家が途切れ、山道にさしかかると車1台やっと通れる瓦礫の道となった.先行き不安になった車が何台か引き返して行った.大きな看板が立っていたのだと自分に言い聞かせ、なおも行くと突然舗装道路になり、ビイナスラインに繋がった.なんらかの理由で未完成の区間が残されたとしか考えられない.無事目的地に到着したことが夢みたいだった.
 美ヶ原は入社式で隣合せとなった松本出身のN君が「君に是非見せたい」と、連れて行ってくれた.”天井が抜けたような”高原の景色に息を呑んだ.雪を戴いたアルプスに囲まれ、静謐な山国の印象は強烈であったことを思い出す.50余年ぶりの邂逅である.
 和田宿に寄る
 ビイナスライン復旧の願いも空しく、来た道を引き返すこととなった.来る時”旧中山道”を横切ってきたことが気になっていた.和田宿脇本陣跡とある.和田宿は下諏訪と佐久の中間に位置し、一時期中山道の宿場町として栄えた.下諏訪へは朝早立ちして一日の行程、途中盗賊の難を避けるため、集団で出発したと伝えられている.旧道の家並みは当時の面影を感じさせる風情が残っている.和田峠への道は旧中山道が見え隠れして続き、史跡も随所に残っている.台風から「中山道みちくさ」という思わぬプレゼントをもらった.旅は楽しい.