随 想(思いつくまま)

(8/6) 阿弥陀如来坐像の縁
 一冊の本が届いた
 郷里在住の弟から一冊の本が届いた。本の名前は「阿弥陀如来坐像」、硬い表紙B5判、200ページに及ぶ豪華な本である。表紙には阿弥陀如来坐像がでんと座っている。隣の町に住む叔父のSさんから、託されたものだという。
  仏像にそれほど興味はないのだがと思いつつ、ページをめくった。内容は村のお寺の阿弥陀如来座像を修理することになり、坐像を解体したところ胎内から経筒が発見された。その模様などを一冊の本にまとめたものであった。そのお寺は「金寶山弘長禅寺」と言い、Sさんは当寺の護持会副会長の役にあった関係から、仏像の修理解体から本編集まで関与したと云う事情によるものだった。
 胎内に経筒
 仏像の大きさは像高195cmという大きなものである。作者は在家の仏師ではなく村在住の僧侶によるもので、胎内には多くの氏名が書かれていたほか、経筒がカスガイで止められていたと記されている。この経筒には法華経全8巻が入っており、経筒の記載から全国六十六箇所の納経所に収めたものだと言うことが記されている。Sさんがこの本を私に届けてくれた意味がはっきりした。私が四国八十八ケ所を徒歩でお遍路したことを羨ましがっておられたからである。
 廻国聖の存在
 発見された経筒は特に戦国時代盛んであった全国六十六部廻国聖による納経用筒とあった。遍路や巡礼の解説書には興味があり何冊かの本を渉猟したが、六十六部廻国という言葉とはじめて出会い、びっくりした。早速図書館で全国規模の廻国聖のことを調べたいと索引を繰ったが、まとまった研究、論文の類はなかった。本の中に特別寄稿として、「出雲・石見の廻国聖」を興味をもって読んだ。六十六部とは全国のこととある。廃藩置県前の州が66あったということか。例えば出雲は雲州、石見は石州など。また、納経所は各州の一宮が本則で出雲では出雲大社が該当するなど。もっと多くのことを知りたいと思う。
 胎内に記された数多くの名前を見るにつけ、祖先の人の幸せを願う信仰の強さを実感した。Sさんありがとう。