随 想(思いつくまま)

(8/22) 「マサイの恋人」を読む
 このところ、ケニアに関する本を立て続けに読んだ。たまたま私の引いたスポンサー・チルドレンの籤がマサイ族の少女に当たったと言うわけで、ケニアとりわけマサイ族に関する本を読んでみた。「マサイの恋人」は野生動物とサバンナの紹介旅行記、観光案内とは全く異なり、マサイ族の生活そのものが描写されてた。
 著者はスイスの女性で、恋人と共に観光旅行に訪れたケニアで見かけたマサイの戦士に一目ぼれし、その戦士と結婚、約4年間マサイ部落で生活した、その記録である。
 ケニアには53の部族が住んでいると言われている。中でも有名なのがマサイ族である。ケニアの国旗の中にマサイ族の盾と槍があることに象徴されるように、マサイ族はケニアの誇りでもある。奴隷狩りの嵐が吹き荒れた時代、敢然として抵抗し、侵略者は陸地の奥深くまでは攻め入ることを断念したと言われている。もともと国境を越えて移動する遊牧民族で、気質としてはライオンに立ち向かってこそ一人前の男とみなされる勇敢な民族である。しかし、国が国境で隔てられ、万事貨幣経済の世の中になるにつれ、従来の自給自足生活は難しくなっている。観光客にマサイダンスを披露し現金収入を得るなど生活は大きく変化を余儀なくされている(私もピースボート地球一周の船旅でモンバサに寄港した際、船内のホール・ステージで彼らのダンスを観たことがある)
 結婚生活は結局約4年間で破綻するのだが、異文化の中で育った者達が理解しあうとことの難しさを改めて思う。また本書は西洋人女性の命をかけた戦いの記録であると同時に、誇りだけでは生きていけないマサイ戦士の斜陽の記録と読めなくもない。
 今、2008年オリンピックのとき、ケニア選手団の入場行進を観、女子マラソンでは41キロまで先頭走者が逃げているのを知らなかったと言うヌデレバが、ラストで中国の選手を抑え銀メダルに輝いたのを観た。男子マラソンに期待したい。

 「マサイの恋人」  著者   コリンヌ・ホフマン
             発行所  講談社 
             2002,9 第1刷発行