随 想(思いつくまま)

(7/3) 敗北を抱きしめて」を読む
 久しぶりに読書を堪能した。先日立花隆著「天皇と東大」の中で再三引用されていたのでこの本の名前は脳内にインプットされていた。歴史部門の棚にこれを見つけたときは躊躇わずに借用の一冊に加えた。日本人にとっていわば「被占領史」と言うべき本である。とりわけ興味深く読んだ章は、今風前の灯火に揺れている憲法の制定過程、憲法は押し付けられた憲法なのか。また、戦後天皇の身の処し方の章、天皇はなぜ退位しなかったのかなどである。
 天皇の力を占領に利用したマッカーサー、なるほど円滑に占領は進んだかもしれないが、責任という言葉を忘れた今の日本が出来上がったこと。官僚を使っての間接統治が官僚の力を増大させ、今の政治を招いていることなど興味深い。イラク侵攻時、日本占領を成功例に挙げた言辞があったが、日本は民主化されたというより、今なお被占領下にあるという思いを強くする。戦争に敗れると言うことがどんなことか思い知らされる。
 「敗北を抱きしめて」 (上下) 増補版 岩波書店発行
  著者 ジョン・ダワー(1938年生) アメリカ在住日本研究学者