随 想(思いつくまま)

(5/8) 色川大吉氏の平和構想
 
「憲法論争」(NHKライブラリー)なる本を読んでいたら、色川大吉氏が24年前に次のような平和構想を述べておられる。少し長いが引用する。

 ・・・自衛隊は直ちにその武器を各地の武器庫に集めて封印し、その鍵は自治体に託し、解体・廃棄までのあいだ、人民管理下におく。そして、まず防災、災害復興、国土保全の部隊に改組する。いつ国民生活を襲うかもしれない大地震、洪水、津波、火山の爆発、大火災などに備えての防災工事、予防建設事業はまじめに計算したら何百兆円もの仕事量にも
なろう。自衛隊はこうした国民生活を守る平和建設部隊の中心になる。そして十分な準備を整えた上で、近い将来には国連の救難事業、警察行動および緊急の被災地救助活動などに国際平和隊としても出張し、活動する。
 日本はこれまで防衛費として空費していた多くの資金を、たとえば次のような国際的な奉仕事業に活用して、日本列島を文字通り、文化と福祉の世界センターとする。
 広島に平和と軍縮に関する国際的な研究機関やサミット常設会場を設け、いつでも戦争回避のための首脳会議が開けるようにする。ニューヨーク
から国連本部と付属機構を絶対平和宣言都市・東京か大阪に移す。国連環境大学を水俣に設置し、公害研究と治療の世界センターとする。札幌、盛岡、宇都宮、松本、金沢、清水、岡山、松江、高知、大分など各地方都市に第三世界技術研修センターや南北、東西間の文化交流センター、豊かな温泉を使った世界難病治療センターや保養基地や二十一世紀資源開発研究所、それに沖縄に世界海洋研究所などたくさんの国際機関を招致ないし新設する。非同盟全方位外交にもとづく友好関係を世界中の国々と締結し、非核、非武装中立地帯を地球上に拡大して行く。それと同時に現代兵器を無効にするような最尖端電子技術などの研究を進め、誤った軍事力均衡理論や核抑止理論を無化することに努める。核抑止理論が核戦争の防止に役立つどころか、かえって危険な、誤った理論であることは湯川秀樹の遺言の通りである。
 こうして世界に先駆けて軍備を全廃し、交戦権を放棄した日本が、その高い技術力と経済力を生かして、東西、南北間の対立の和解と国際的な奉仕活動にめざましい貢献をするならば、日本列島を北から南まで核ミサイルの針ねずみにして防衛するより、はるかに高い安全性が保障されるだろう。私たちは、こうして現憲法の理想を実施に移すことによって、人類の新しいページを開いてゆけるのだと確信を持って主張する。もし、その目標が受容されるならば、生き甲斐を失っている日本の青年たちも目を輝かして立ち上がってくるだろう。教育改革の原点もここにある。(以下略)

 24年前に発表されたにもかかわらず、今なお十分な説得力を持っている。あえて紹介した次第である。