随 想(思いつくまま)

(5/28) お昼のひと時
 十数年ぶりの出会いだった。
 毎週火曜日と金曜日、我が家の炊事当番は私が務めることになっている。献立はその日、街を徘徊し、食欲を感じたものにする。今日はこれというものに出会わず、近くの生協で買い物をし、その近くのテンミリオンハウス「クルミの木」で軽い昼食をとった。利用者は向かいに二人のご婦人が会話に余念がなく、お隣はムクロジやハクウンボクの実を繋いで細工物の3人、ホールではハワイアンのメロデイでフラダンスが始まった。
 先ほどから目の前に置いてある利用者名簿を見るとはなしに見ていると、知った名前がある。お向かいの2人のうちどちらかであるが確信が持てない。結局ハウスの人を介することになるのだが、一瞬先に私を認めてIさんが声をかけて下さった。まあお久しぶり。名簿の名前を見て声を掛けるなんてどうかなと思ったんですけどね、失礼しましたと私。
 Iさんとの出会いは私が町内の樹木を訪ね歩いていた十数年前に遡る。名前の判らない木に出会うと片っ端から玄関のチャムを押して、家の住人に尋ねて、一つ一つ名前をおぼえていったのだ。Iさんはその日のことをよく憶えていらっしゃった。「チャイムが鳴って・・・・ ツキヌキニンドウでしたね。」と。「この家は前に住んでいらした方がお茶かお花の先生だったとかで、お庭には珍しい草花が一杯ありましたね」と私。
 「木版画年賀状の会にも来て下さいましたね、あの会は今も続いているんですよ。七夕様みたいに年一回集まっておしゃべりしています」「私は虎を先生にほとんど彫ってもらいました」「山田さんの店で飲んだ時の話で盛り上がります」「闇太郎さん?」「そう、いまや吉祥寺文化の象徴的存在で、雑誌によく登場します、今年も11月ごろにやりますから来てください」
 隣で会話を聞いていたハウスの人が、「最近、庭にクルミの木を植えたんです。この近くでクルミの木はどこにありますか。」「成蹊学園高校体育館の東側にありますね、・・・ あの時まとめた本が図書館の3階にありますから見て下さい」「本の名前は?」「『町内樹木ものがたり』です。いまは借り手がほとんどいないからいつでも借りられます」
 そんな楽しいひと時を過ごし、アロハ!と声をかけて別れた。