随 想(思いつくまま)

(5/24) 「バルトの楽園」を読む
 ドイツ俘虜収容所のこと
 四国八十八ヶ所霊場1番札所霊山寺近くに、かって世界第1次大戦におけるドイツ人俘虜収容所があった。収容所所長松江豊寿が俘虜に対し人間味ある態度を貫いたことで知られる。収容所での生活、地域住民との交流を描いた映画「バルトの楽園(がくえん)」が一般公開された。本書はその元となったもので、映画のスチール写真が散りばめられている。収容所跡には今はドイツ舘が建っている。
 遍路の始まり
 昨年11月からの四国八十八ヶ所歩き遍路は、1冊の本をドイツ館に届けることから始まった。届けた本はたまたま通りがかった武蔵野中央図書館前の青空市で、自由にお持ち帰りくださいと表示された一角にあった。表紙の若き軍人が私を見つめていたので、手にとってみると、どうやらドイツ人俘虜収容所の生活記録らしい(記述はドイツ語)。遍路出発を数日後に控えていた私はこの本をドイツ館に届けるのが使命のように思われたのである。
 届けた本は資料展のカタログ
 後日、ドイツ館舘長の田村氏から礼状が届いた。本書はヴェルツブルグでの資料展のカタログだそうで、当館に1部しかなかったので重宝したとのことであった。表紙の人物は収容所で写真屋をしていた一人(名はウイリアム・ケベアライン)ということであった。「バルトの楽園」にも彼が登場するかもしれないと期待しながら読み進めた。(ヘルマン・ラーケというカメラマン一等水兵が登場するが彼と同名の人物は登場しなかった。)
 彼からの感動の贈り物
 俘虜は職業軍人が少なく、大部分が一般の市民であったことも幸いし、ヨーロッパのいろいろの技術を伝えたようである。洋裁、パン焼き、陶器、写真、器械体操の技術などなど。
 そして収容所別れのラストシーンはベートーベンの第九演奏が待っている。松江所長に会津藩末裔という伏線を設定するなど大変良くできた脚本で観客を感動の涙を誘ったことであろう。私も涙をこらえることが出来なかった。これも彼W・ケベアラインの私に対するお礼だったような気がしてならない。
 以上HP”遍路道中記”初日の記載と重複する点が多々ある事をお断りしておく。

 バルトの楽園 = 著者・古田求、発行所・(株)潮出版社