随 想(思いつくまま)

(5/13) 「闇太郎」を守る勝手連
 闇太郎とは
 闇太郎とは吉祥寺東町にある居酒屋である。目下家主から立ち退きを訴えられ裁判で係争中である。オーナーの山田さんは木版画同好会のクラブメイトで、10数年来の付き合いである。山田さんから1通の封書が届いた。裁判が意図しない方向に向っているので、最後の手段として、闇太郎存続の要望書を裁判官に送りたいので協力してほしいという内容だった。
 勝手連の結成は不発
 かねてから私は、いよいよ埒があかない時は勝手に署名行動に出ようと決めていたので、遂にその時が来たかと、早速飲みに出かけた。木版画の会のメンバーにすでに働きかけ済みかどうか、その辺の事情が知りたかったのである。結果としては年賀状をやりとりしている人には、既に発送したということだった。下記オーナーの方針ともあわせ、私の出る幕はないと判断した。
 オーナーのポリシイ
 要望書を提出することが、裁判に圧力をかけていると誤解されるのは不本意であること。店の客である有名人(例えば山田詠美、川上弘美など)も協力したいと言ってくれているが、逆に有名人を利用しているようには受けとられたくないこと、などから店に来たこともない人にまで広げて要望書の署名を集める気持はないことなど、彼の本音を聞くことができた。オーナーの確かなポリシーに流石と思った。
 闇太郎は吉祥寺の文化
 「渋さを通り越して、わび、さびの風格が漂う」とは常連の山田詠美のエッセイ(小説新潮2007年4月号)だ。川上弘美の「センセイの鞄」に出てくる居酒屋はどこか?当時文壇でちょっとした話題となったが、本人の口から「闇太郎さんをイメージして書いたんですよ」と言われ励まされたとオーナーから聞いたことがあった。35年の年月は文化を生み育んで行く。老朽化と云う理由だけで日本家屋をビルに立替え、やすらぎの酒場、癒しの空間を抹殺することは許せないし、存続させるために闘いたいというオーナーに共鳴する。
 お勘定
 焼酎(麦)お湯割2杯、おでん1皿(6個)、いんげんのおひたし、焼きそば。以上〆て2,150円、まさに「飲んで食べて安い店」である。いつものように満ち足りた気分で、夜の五日市街道を我が家へ急いだ。