随 想(思いつくまま)

(3/9) 「アフリカ人はこう考える」を読む
 ワールド・ビジョン・ジャパン・のスポンサーチャイルドをケニアに持ってから、アフリカ本ないしケニア本をたくさん読んだが、いずれも隔靴掻痒の感があった。上記の本は副題に「作家グギ・ワ・ジオンゴの思想と実践」とあるとおり、ケニアの作家グギの論文等を纏めた1985年発行の本である。かなり前の本だが、時の経過を感じさせない新鮮さを持っている。アフリカ人の生の声を聴く思いである。
 今ではアフリカの大部分の国が独立国となった。ややもすれば植民地と独立国という捉え方をしがちだが、彼は言う。「植民地時代から第2植民地時代に入った」と。今は現地人が帝国主義者と手を結び権力を行使している時代、つまりアフリカ人の間で支配と被支配が起こり、事態を複雑なものにしているというのである。
 資本主義の発展に貢献し、寄与したのはアフリカの奴隷である。奴隷なくして資本主義の今日はなかったという記述にまずドキリとする。そしてキリスト教の宣教師は帝国主義者の尖兵として役割を果たした。以前からあった土着の伝承、踊り等の文化を根こそぎ破壊した。そして教育の名においてヨーロッパの言語を押し付けた。 読み終わってアフリカ人がアイデンテテイを回復するその道のりは長くて遠いと感じた。
   ふり返って日本は無謀な戦争に破れ、民主国家に生まれ変わった
  とややもすれば錯覚しがちだが、彼流の言い方をすれば「アメリカの
  第2植民地」の状態と言うべきであろうか。納得!
 世界を知ろうと発展途上国の自立支援事業に幾ばくかの手元流動性を拠出することにしたわけだが、本当に知りたいのはこうした事業が、真にアフリカ人の側に立つものなのか、それとも幼い子どもを食い物にした植民地支配残党の慈善事業なのか、その辺は依然としてわからないのである。

「アフリカ人はこう考える」ー作家グギ・ワ・ジオンゴの思想と実践ー
著者:グギ・ワ・ジオンゴ  編者:宮本正興  訳者:アフリカ文学研究会
発行:第三書舘  1985年7月1日初版発行