随 想(思いつくまま)

(3/5) 「三鷹事件」を読む
 三鷹駅で無人車両暴走 
 最寄のJR駅は
どこですかと聞かれたら三鷹ですと答える。徒歩20分のところに住んでいる。その三鷹駅で今から58年前に、無人電車が暴走し6名が死亡、20人が重軽傷を負う、いわゆる「三鷹事件」が発生した。昭和24(1949)年の7月15日のことである。
 事件が発生した当時は、日本はまだ連合軍の占領下にあり、GHQが関係していると言われる謀略事件が相次いで起きた(同年7月6日には国鉄下山総裁の轢断死体発見、8月17日には東北線松川駅付近で列車転覆)。日本を反共の砦としたいアメリカの意図の下、日本共産党が徹底的に弾圧された頃の事件である。
 竹内景助の単独犯行か
 本書は三鷹事件の真犯人は誰かと云うより、有罪の物証はなく自白だけで死刑が確定した竹内景助が本当に犯人かどうかを問う方に重点が置かれている。 それでは真犯人は果たして誰か。本の中で当時の共産党書記長徳田球一が正鵠を得た発言をしている「証拠隠滅をした者が犯人なんだ」と(不審な死にかたをした2名の存在を暗示するにとどめ、作品は未完である)。事故発生を予測して現場にいたMPの存在、事故発生直後から立入禁止として関係者の調査を阻んだ者がいたことが明らかになっているが、これらを全く無視した上での裁判であった。
 歴史の批判に耐えられる判決か
 時が流れて埋もれていたものが表面に顔を出す。時の首相は[共産党は社会不安の扇動者」と断定し、裁判官は(たとえそれが正しくても)検察側の提出資料のみにより判断し、被告の弁護士は無罪の証拠をあえて提出せず、最高裁は8対7という票決を作為的に作り出している。この裁判はお釈迦様の掌の上の茶番劇であった。無実の竹内景助は殺された、悪い奴ほど良く眠る。
 歴史は繰り返す?
 やがて日本は国を二分する騒然たる渦に巻き込まれようとしている。新憲法制定である。悪い奴が繰り出すウルトラC謀略が再び日本に吹き荒れる恐れはないか。心配症の私は眠れない。

 (注)三鷹事件 1949年夏に何が起きたか
     2005年3月5日 初版第1冊発行
     著者         片島紀男
     発行所       新風舎