随 想(思いつくまま)

(12/14) インドという国

 中国の躍進がめざましい。しかし、21世紀はインドがその中国を追い抜くだろうと予測する人もいる。どんな国であろうかと、一冊の本を読んでみた。本の名前は「インド厄介な経済大国」2008年刊、著者はエドワード・ルースというフイナンシャルタイムズの南アジア支局長として5年間ニューデリーに滞在した人である。

 インドといえばガンデイを思い出すぐらいで、あまりよく知らない。去る大阪万博で沢山の人出の中、唯一入ったパビリオンがインドだった。官能的な仏像彫刻と国の近代化を誇示する製鉄産業を前面に押し出したパビリオンだった印象が記憶に残っている。知識としては、この国にはカーストという階級制度が厳然として存在し、釈迦誕生の国と言われながら、すでに仏教は少数派に属するぐらいの理解である。

 読後感をランダムに羅列すれば、まず、そうか!と新鮮な印象を持ったのが、インドは民主主義の国であるということ。戦後も国際的に一貫して国の独立性を堅持した国と言われて納得がいく。しかし、国の現状は、官僚の汚職・腐敗は蔓延し、裁判官の絶対的不足から、犯罪者は野放しになっており、道路等のインフラ整備は遅れ、行政の効率は著しく非効率である。カースト制度は今なお根強く残っており、どうにもしようがない国のように思われる。またその一方でアメリカのIT産業躍進の一翼を担う人材の宝庫という一面を持っている。多数の宗教、政党、階層を擁しながら、国が分裂することもなく一国を保っているこの寛容性を指摘されれば、この国をどう評価した良いのか頭が混乱する。

 インドが21世紀最大の国になるためには、越えなければならない四つのハードルを著者は提示する。すなわち、@3億の人びとを極度の貧困から救い出し、それ以外の国民には、より安定した生活水準を与えることA急速に悪化する自然環境を守ることBエイズの感染拡大を防ぐことC自由と民主主義を守り強化していくこと。である。

 かって、三ちゃん農業の結果、嫁が財布を握った過程を思い出すと、インドにおいても旧来の陋習を一つずつ解決していくように思われる。読み終わっての今、インドに賭けてみたい気がしている。

「インドの厄介な経済大国」著者エドワード・ルース

発行所=日経BP社 発行日=2008年10月27日