随 想(思いつくまま)

(11/26) 塚越和子さんのこと
 塚越さんが亡くなった
 去る10月27日、卵巣癌、享年78歳、昨11月26日「語る会」が芝浦JALシテイで行われ出席した。四国遍路から一時帰宅、メールを開いてその訃を知った。遍路中でなく、出席できたのは幸い、呼び戻してくれたのかも知れない。
 彼女のことは今まで何回かこのHPに書いた。ただ行きつけの飲み屋の女将に過ぎないのだが、わたしの交友関係の中で特別の意味を持っている。それほど足繁く通ったわけでもないのだが、付き合いは50年を超える。しかし、彼女の出自は何一つ知らないままである。くつろいだ気分で四方山話をして、別れるだけである。
 とはいうものの店の来歴については、お互いに一部始終を共有している。駅前のおでん屋時代、ハーモニカ横丁時代、和風割烹の時代、その罹災、そして今のビルテナントに至るまで。この間、私はずーっと東京勤務と言うわけではなく、地方勤務もあったが、東京に帰る度に店の在りかを尋ね歩いたことから、いまや一番古い客の一人になっていたというわけである。
 彼女は美しくもあったが、彼女の魅力はこの仕事に誠心誠意打ち込んでいた姿にあった。私も慣れるにしたがって随分辛らつな言葉を吐くこともあったが、許してくれる包容力があったから救われているのだ。親族でなく、職場の同僚でなく、趣味仲間
でもない彼女の存在が、私の人生にもたらしてくれた潤いは計り知れないものがある。特別な意味とはこのことである。
 思えば不思議な間柄である。好きで惚れて通ったわけだが、手一つ握った記憶もない。近く、また四国遍路に出発する。今度は手を取って導いてくれるかもしれない。ありがとう!
       合掌