随 想(思いつくまま)

(10/26) 「獄中記」を読む
 何故外務省に関心があるか
 私は今の憲法九条は変えるてはならないという立場に立つ。国の自衛権は否定しないが、武力によって国を衛ることは不可能になっているし、市民に決して幸福をもたらさないと信じている。では何を以って自衛権を行使するのかと問われれば外交力によるべきだと思っている。その意味で外務省の体質、実力に関心がある。
 鈴木宗男バッシングは何だったのか
 社民党の辻本清美が”疑惑の総合商社”といい、共産党の佐々木憲昭が”ムネオハウス”を国会で追及し、マスコミは田中真紀子VS鈴木宗男バトルを面白おかしく書き、一般市民は”宗男は悪”という烙印を押した。”悪”の相棒”外務省のラスプーチン”こと佐藤優は「国家の罠」で「国策捜査」という業界用語に市民権をもたらし、現在たくさんの雑誌等で健筆を振るっている。いったい”悪”は誰だ!という疑問は消えない。本書を読ませた動機である。
 司法が政治の手先に
 この本で佐藤は自分をあくまで体制内の人間と位置づけ、獄中に在ることの意味を虚心坦懐に語り、国益とは何かを裁判で明らかすることに法廷を意味づけようとしている。国策捜査つまり司法が政治の手先となっていることは”体制内人間”としてはまず容認した上で、外交の現場はいかにあるべきかを熱く語っている。外交に付き物の諜報活動の具体的な事象を裁判上での武器とすることなく、検察当局と真正面から対峙しようしている姿勢はさわやかで迫力がある。
 鈴木や佐藤は小渕・森ラインから小泉・田中への路線変更がもたらした国策捜査の捨石になった実態、外務省からロシア系、中国系が消え(中国系は田中真紀子失脚)、アメリカ一辺倒になっていく過程、政治家と官僚の在り方など考えさせられることは多い。
 監獄の描写など
 512日に及ぶ獄中生活の充実振りに舌を巻く。読書の量は半端でない。もともとキリスト教信者である筆者の哲学的思考は奥深い(全部はとても理解できない)。
また、死刑囚への思いやりは人間の幅を感じさせる。
 獄中記 著者:佐藤優 
       2006年12月6日第1刷発行 
       発行者:岩波書店