随 想(思いつくまま)

(1/17) もう一つの1月17日
 金色夜叉
 1月17日は13年前、阪神淡路大震災により大きな犠牲者を出した日である。この日はまた尾崎紅葉作、「金色夜叉」の名場面、間貫一がお宮に「今月今夜のこの月を僕の涙で曇らせて見せると」決別した一夜でもある。当時は既に太陽暦が採用されており、極端な場合、月の出ない1月17日もあると言う人もいるが、旧暦では同じ場所に同じ形の月が必ず出たのである。それはさておき、今日このお芝居をみんなで楽しんだ。以下はその顛末記である。
 ボランテアからの提案
 私は昨年の秋ごろから、町内にある高齢者施設吉祥寺ホームに週一回ボランテアに通っている。3ヶ月経ったある日、施設の人から感想を聞かれた。それに対してこう答えた。「皆さんは用意されたスケジュールを粛々とこなして帰られる。そのこと自体は素晴らしいことだが、元気な方もたくさんおられ、この人たちは月に1回ぐらい、大声を張り上げ、思い存分笑い、エネルギーを発散する日があってもいいと思います」と。では企画を立ててくださいと言われ、用意したのがデイサービス利用者自身が演ずるお芝居つまり「ミュージカル調・金色夜叉・熱海海岸の場」でした。
 波の音からカーテンコールまで
 まず小豆の転がる波の音の実演から始めた。小豆の入った箱を席まで持って行き、ほぼ全員にトライしてもらった。物珍しさもあってみんなが思い思いの波の音を出された。この時点で「よし行ける」と、手応えを感じた。それから説明を交えて出演の希望を募り、配役が決まった。名乗り出る人がいないのではないかと言う心配は杞憂に終わった。珍演技、迷演技続出で爆笑裡に1時間はあっという間に終わった。当初私が感じていた「自己表現エネルギーが十分残っている」ことを実感した。
 自分に出来る役割
 デイサービスを迎え入れるスタッフは利用者から見れば孫のような年齢である。利用者であるお年寄りがどのような歴史を生きてこられたかを知れと言うほうが無理である。その点私は年齢がそう開いているわけではない。この辺に私の役割もあるのかなと感じた。「来月はなにをやるの?」と聞かれたのは正直嬉しかった。
 蛇足
 配役=貫一、お宮、月、ナレーション、男の声、女の声、波の音担当、拍子木担当
 用意した台本=歌謡曲「金色夜叉」の歌詞
 小道具=マント、角帽、カツラ、月、小豆と箱
 音楽は当日ハーモニカ役が所用のため欠席、職員の方が笛で対応。