随 想(思いつくまま)

(1/16) 「帝都東京・隠された地下網の秘密」を読む
 天邪鬼ひとこと
 
あまのじゃくの異名をもつ我輩の読書傾向は、人とはちょっと変わっている。先日は”9・11事件”は、当局が事前にテロの計画をキャッチしておりながら真珠湾効果を狙って黙認し、テロを成功させたという噂話に触れたが、天邪鬼はどうしてもそのような話題に惹かれるのである。今日取り上げる本の内容もオヤ!と思うが、私はそれを信じてしまう部類に属している。
 地下鉄銀座線1本のころ
 就職のため田舎から上京し、東京の西も東もわからなかった昭和25年ごろ、東京の地下鉄は渋谷・浅草間の銀座線1本であった。当時或る学者の「地下鉄は荷物を運ぶのではなく、人間の頭脳を運ぶ道具であり、いずれ東京は地下網が縦横に走るであろう、あたかもパリのように」という言説に納得、記憶している。現にそのようになっている。銀座線の頃は新橋と渋谷を結ぶほうが近いのに、当時シールド工法がなく、坂道の六本木を迂回せざるを得なかったと聞いた。今日の地下鉄路線はそういう技術上のネックもなく、人の流れを調査・計算し次々と現在の路線が次々と敷かれたのだと思っていた。しかし、事実は異なる。戦前から既に多くの地下道が掘られていたと言うのである。
 戦前から既に地下鉄網は出来ていた
 ここ武蔵野市は戦時中、ゼロ戦のエンジンを作っていた中島飛行機の工場があり激しい空襲に見舞われたところである。工場は漸次地下にもぐり今でも埋められた地下道は多いという。トンネルは一度作られると二度と元には戻らない。コンクリートを除去するような無駄なことはしないからである。
 都内でも1本の地下鉄が完成するまでには、資材運搬用とか本線以外に複数の穴が掘られ、使用していないトンネルが沢山あることは聞いていた。しかし、現在走っている路線の殆んどが戦前に計画、申請、許可されたものであり、すでに掘られた路線を利用したものも多いという。
 戦争は都市を地下に潜らせる
 近代戦は航空機優位である。爆撃に備えて都市は地下に作られる。加えて軍の機密が作用し、情報はマル秘扱いとなり、場合によっては偽の地図が作られたりする。帝都東京の地下は無限の謎を秘めている。続編も読みたいと思っている。

 「帝都東京・隠された地下網の秘密」  発行所(株)洋泉社
 著者  秋庭俊