■ 小学校の英語教育の目標とは
【英語必修化の経緯】
平成20年3月に文部科学省から平成23年4月1日から施行される新小学校学習指導要領が発表されました。ここには第4章に「外国語活動」として新たに英語教育に関する指導要領が記載されています。つまり、平成23年から小学校での英語教育が必修化されるということです。
ここに至る経緯は平成15年3月に文部科学省から出された指針「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」に端を発しています。
この指針では
「今日においては、経済、社会の様々な面でグローバル化が急速に進展し、人の流れ、物の流れのみならず、情報、資本などの国境を越えた移動が活発となり、国際的な相互依存関係が深まっています。それとともに、国際的な経済競争は激化し、メガコンペティションと呼ばれる状態が到来する中、これに対する果敢な挑戦が求められています。さらに、地球環境問題をはじめ人類が直面する地球的規模の課題の解決に向けて、人類の英知を結集することが求められています。こうした状況の下にあっては、絶えず国際社会を生きるという広い視野とともに、国際的な理解と協調は不可欠となっています。」
という状況から、「国際的共通語としての英語のコミュニケーション能力を身に付けることが不可欠である」としており、さらに、「このことは、日本が世界とつながり、世界から理解、信頼され、国際的なプレゼンスを高め、一層発展していくためにも極めて重要な課題である」と位置付けています。
つまり、英語教育は近い将来の日本の世界における立場を押し上げていくための国家戦略といえます。
この認識の下、「英語が使える日本人」の育成のための行動計画において「英語が使える日本人」を育成する体制の確立に向けて英語教育の改善の目標や方向性の明確化及び、その実現のために国として取り組むべき施策を具体的な行動計画がまとめられています。
その具体的な施策の一つが新小学校学習指導要領に反映されているというわけです。
【日本人の英語レベルの目標値】
「英語が使える日本人」の育成のための行動計画においては日本の英語教育の最終目標は
「中学校・高等学校を卒業したら英語でコミュニケーションができる」
というもので、そのレベルは目安として中学卒業段階で英検3級程度(挨拶や応対、身近な暮らしに関わる話題などについて平易なコミュニケーションができる)、高等学校卒業段階で英検準2級~2級程度(日常的な話題について通常のコミュニケーションができる)としています。
最終的には「大学を卒業したら仕事で英語が使える」ということが目標になっています。
この目標を達成するために小学校での英語教育の必修化ならびに中学・高校での英語授業数の増加が新学習指導要領に反映されています。
特に大きなポイントはこれまで中学生で学習する内容であった英語を聞いたり話したりすることに慣れ親しむという部分が、小学校英語の目標に掲げられています。
このことはこれまで中学校で学んでいた「聞く」「話す」といった部分を小学校に移し、中高6年間英語を勉強しても英語が話せないという問題点を低年齢の段階から開始してより話せる英語を効果的に習得させることで改善していこうとしていることが伺えます。
【小学校の英語教育の目標値】
以上のような経緯のなかで、新学習指導要領の第4章 「外国語活動」に記載されている目標は
「外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。」
となっています。
小学校の場合、英検やTOEICでの具体的な数値目標が立てにくいため、抽象的な表現で分かりにくいですが、まずは理屈抜きに日本語を習得する過程と同じような感覚で簡単なフレーズを覚え、挨拶や自己紹介ができる程度まで習得できればいいといったところではないかと思います。
⇒ その他コラムはこちら