いんちょのツーリング日記


四国編

その5




2007/4/1 晴れ

3:30 起床。
当然、まだ真っ暗。
暗い中、昨日の飲み残しのビールをくぴくぴと飲む。
うん、まだ冷えている。
缶ビール用の断熱シートに入れておいて良かったと思う。
文明万歳。

6:30 二度寝から、再び起床。
予定通りの時間に、起床。
バッチリである。
だが気付けば寝ていて、三度目の起床は8:30。
……ま、いっか。

空を見上げれば、ピーカンの天気。
せっかくの良い天気なので、今日の午前中はグダグダ過ごす事に決める。
シュラフやテントの底を乾かしたいのだ。
今日の夜が四国最後の夜であり、今夜も晴れるとは限らないのだ。
そんな訳で、まずはコーヒーを淹れ、グダグダグダ。
結局、出発したのは11:00。
本当にグダグダしてしまった。

さらば、東屋。
サンキュー、東屋。





昨日と同じように、四万十川を併走して下る。
だが道中、また雨となる。
やれやれである。
とある峠の途中、木の生い茂った雨宿りに丁度良い場所があったので、バイクを止める。
暫くすれば止みそうなので、暫し雨宿りである。
一服しながら周りを見渡すと、喫茶店があった。
こんな寂しい場所で商売になるのだろうかと、つい余計な気を回してしまうが、腹も減ったのでその喫茶店に入る事にした。

メニューは、無難にカレーを選んだ。
で、食べた。
絶対、ボンカレーだと思った。

ところでその喫茶店、漫画がそれなりに置いてあり、丁度釣りキチ三平があった。
そういえば、この漫画で四万十川に興味を持ったのだったと、茜屋流小鷹網編の単行本を手に取り、懐かしさとともに読み耽る。
この話の舞台になった川が、四万十川なのだ。
と、長年ずっと思い込んでいたのだが、実際は和歌山県の「紀の川」だった。
そりゃねーよと思った。
真実は、時に厳しい。





そんな訳で雨も何とか止み、再び四万十川を併走して下る。
段々と、川幅が広くなっていった。
そして、夕方頃に河口に到着。
走り易い道、走り難い道とあったが、そう、私は走り切ったのだ。
道端にバイクを停め、河原に下りてまずは一服。
無論、携帯灰皿は常備である。
腰を下ろして、暫し雄大な川をぼけっと眺める。
思う事は、ただ一つ。

あ〜、疲れた。

まあ、こんなものだろう。
そうして暫くの間、川を見ながら何をするでもなく、私はただぼんやりとし続けた。

ところで、河原に入る際、アイスクリーム屋の屋台っぽいのを見かけた。
別にアイスを食べたい気分でもなかったので買わなかったが、実はこれ、アイスクリームではなくアイスクリンを売っていたのだ。
後に調べたところ、アイスクリンとは高知県内では最もポピュラーなアイスクリームであり、普通のアイスクリームとは違い、シャーベットに近いとの事。
食べておけば良かったと、ほんの少し後悔。
やはり下調べは大切なのだなあと実感した今日この頃である。

さて、と。
日も暮れ始めたので、四万十川を後にする事にした。
ふむ、今日はどうするかな。
最後に、ふと振り返る。
そうそう来れる所ではないので、もう一度目にしておこうと思ったのだ。
そうした時、視界の端にたまたま川の名前の書かれた表示板が映った。
看板には『長津川』と書かれていた。

……あれぇ?





さて、と。
日も暮れ始めたので、四万十川を後にする事にした。
私は何も見ていない。
ふむ、今日はどうするかな。
まずは、四国最後の宿泊地を決めなければ。
だが、せっかくの高知なので、かつおのたたきは食べたい。
香川のうどんと、高知のかつおのたたきだけは、食べておきたいのだ。
愛媛の鯛めしは、残念ながら既に諦めている。
しかし、四国を後にする前に、本場のかつおのたたきだけは食べたい。
どうしても食べたい。
そんな訳で、高知駅へ向かう事にした。
後の事は、食べるものを食べてから考えれば良いのだ。





19:00 小雨に降られながら高知駅に到着した。
高知ってまだ路面電車があるのね、知らなかった。
まあ、それはそれとして、これから向かうのは高知城。
のすぐ近くにある「ひろめ市場」である。
ひろめ市場とは、色々な店が一つの場所に集まっている集合型の市場で、屋台村をイメージすれば分かりやすいかもしれない。
市場の中央にある広場にどーんと机や椅子が並べてあり、周りを囲むようにある店の物をここで食べるのだ。
店舗の中で食べるのではないので、こういった所が初めての人は、戸惑う事請け合いである。
実際、自分も戸惑った。

そして私の目当ては、ここの「明神丸」という店である。
この店は「明神水産」という水産会社の直営店で、実際にかつおのたたきを藁で炙っているとの事。
といっても炙っているのは若い人であり年季の入った職人という訳ではないので、細かいところまで気にする人は、焼き加減が惜しいなどの少しの不満が残るかもしれない。
ちなみに私は気にしない。
色々調べたが、ここが良さげだったのである。
何と言っても、場所が分かりやすいのがとても良いのだ。

そんな訳で、明神丸という店で「かつおのたたき(並)塩」(\1,000)と「たたき丼」(\500)を食べた。
勿論、美味しかった。
無論、美味しんぼのような美味さではなかった。
普通に美味しかったという事である。

20:00 ひろめ市場出発。
さて、出発である。
とうぜん、日はとっくに暮れており完全に夜である。
しかも、雨。
小雨とはいえ、今からテントを張る場所を探すのは、かなり面倒くさい。
それに明日のフェリーの出発時間は、11:30と午前中であり、当然寝坊は出来ない。
まあ、キャンプなら朝自然に目が醒めるものだが、こういう時に限って寝坊するというのがお約束でもある。
何より面倒くさい。

なので、このまま徳島まで走って、あちらで夜を明かす事にした。
駅前なら漫画喫茶の一つや二つはあると思うので、そこで一晩明かせば良い。
ツーリングで、しかも四国くんだりまで来て漫画喫茶かよとは自分でも思うが、もう何もかも面倒くさいのだ。
だが、そうする為には一つ問題があった。
高知から徳島まで、給油せずに辿り着くかどうかである。
四国という場所でこの時間に、ガソリンスタンドが開いているかは微妙なのだ。
容量15リットルのタンクは、今は満タンだ。
普通に走ればリッター15〜20kmはいくので、計算では250km前後はいく筈なのだが、肝心の徳島までの距離が分からない。

もしも途中でガソリンが切れたら、本気でシャレにならなかったりする。

いや、地図で調べれば良いだけの話なのだが、なにもかも面倒くさいのは前述したとおりであり、もうとにかく面倒くさいのだ。
ならばこのまま高知で漫画喫茶なりで夜を明かせば良いと思わないでもないが、それだと明日フェリーの時間に間に合うか少々の不安が残るのだ。
よって、今から徳島まで一直線である。
後悔しそうな気もしたが、かなりしたが、そんな事を考えるのも、もはや面倒くさいのだ。





結論から言おう。
やはり、後悔した。
ガソリンスタンドは途中に一軒しかなく、しかも閉まっていた。
まさか本気で一軒も開いてないとは……
やはりというべきか、考えが甘かった。
実に甘かった。
後悔先に立たずというが、本当にその通りだった。

もっとも、徳島には無事到着出来たのだが。
距離的には、高知から約160kmくらいだったのだ。
いや良かった良かった、燃費的には助かった。
では何を後悔したのかといえば、ズバリ走った事そのものをである。
つまり、街灯のない道を、しかも山道を、更には夜、あまつさえ雨の中で走った事を後悔しているのだ。
いや、本気で大変だったさ。
とにかく怖かった。
雨の夜道を走った経験のある方には賛同して貰えると確信しているが、メットのシールドを完全に閉めると、前がろくに見えないのだ。
幸い対向車はめったに通らなかったので、雨に濡れたシールドにライトが乱反射する無かったが、あれは本当に怖かった。
のたくそとしか走れず、極たまに後ろに追いついた自動車にはハザードを出し全てパスして貰った。
頭文字Dのドライバー達は人間じゃねえと、心の中で叫んだ。
四国の中心でなかったところが、惜しいところだ。
とにかく、雨夜の山道なので200km以上あったら燃費的にヤバかったかもしれない。
何とかなった事ではあるが、甘い考えはやはり甘い考えだった。
やめておけば良かったと、今では心より後悔している。

結局徳島駅に到着したのが、AM3:00。
いや、本気で辛い7時間だった。
予定通り、駅前の漫画喫茶で時間を潰す。
かろうじて一軒あった。
まさか、漫画喫茶まで一軒しか無いとは思わなかった。
続きを読みたかった釣りキチ三平も置いてなかった。
こんちくしょう。





こんな感じで、私の四国の初ツーリングは終わった。
ここから先に、述べるべき事は特にない。
フェリーの出発時刻が11:30であり、手続きは10:00より開始だが、10:45で十分だったなあという事くらいである。
正直、凄い待たされた気分であった。

また、振り返れば、今回のツーリングではろくな思いをしなかった気がする。
全ては、日数が足りない事が理由だろう。
日数に追われた旅は、厳しいものがある。
フェリーで往復二日使ったので、四国には四泊しか出来なかったのがイタかった。
いつかはもう一度来て、リベンジをしたいと思う。

そう、いつか必ず。










おしまい。










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