いんちょの
ツーリング日記



北海道編


その9





6/23 (曇り時々霧のち晴れ)



30となって迎えた初めての朝は、どんよりと曇っていた。

ついでに、霧もかかっていた。

輝かしい未来を暗示している様で、ドキドキと胸を躍らせたものである。


今日は摩周湖に行くつもりだが、この霧では何も見えないかもしれない。

でも、行くけど。







真っ直ぐである。

感動的なくらい、真っ直ぐである。

いや、もうホントに真っ直ぐな道である。

これが噂に名高い、開陽台前の道かあ………

本当に真っ直ぐだった。

坂も、良い味出してたし。

北19号


開陽台前にあるこの道は、真っ直ぐな道として、北海道でも特に有名な道の一つである。

アップダウンを繰り返すこの道は、実に絵になる道なのだ。








裏摩周湖展望台駐車場にて、キタキツネと遭遇。

触る訳にはいかないのが、残念である。

触ると、アニサキスという寄生虫が、うつる危険があるそうだ。

裏摩周湖展望台にて








摩周湖は、晴れていた。

そう言えば、晴れの摩周湖を見ると婚期が遅れると言うのは、本当だろうか。

今更だけどね。

摩周湖


他にも、摩周湖の真ん中にある島(カムイシュ島)が見えたら幸せになれる、

なんて話も耳にしたが、本当だろうか。

………本当だと良いなァ。







もしも、本当だったなら。

私の望みは、ただ一つ。



バラ色の人生。



そう、バラ色の人生である。

嗚呼………薔薇色の人生………



良いなぁ………








そういやさっき、駐車場でBMWのバイクに乗っていたお兄さんから、ラーメン券をもらったっけ。

この事だったら嫌だなあ。

心から、嫌だ。







神の子池に行った。

摩周湖の地下水によって出来たと言われる、森の中にひっそりとある青み掛かった水の池。

水が本気で澄んでいて、とてもとても良い感じである。

神の子池




この池は、摩周湖がアイヌ語では「キンタン・カムイ・トー(山の神の湖)」と言われており、その伏流水から出来ているという言い伝えから、「神の子池」と呼ばれているそうだ。

小さな池で、水がとても澄んでおり、沈んだ倒木や池の底までクッキリと見える。

その透明度から、青以外の光の反射が少なく青み掛かって見えるようだ。

この辺りは、摩周湖と同じなのだろう。

水温が一年中低く、池の中の倒木が水の中に腐らずに沈んでいるエメラルドブルーの景観は、何ともいえない不思議な美しさである。



そんな池で、何故かスキューバをやってる三人組がいたが。


「お騒がせして、すみませ〜ん!」


と言われてしまったが、


「謝りゃ良いのか、おい!」


と心の中で想ったのは内緒である。


ともあれ、この池は本気で綺麗で、こんな綺麗な池は生まれて初めて見たのである。







屈斜路湖(くっしゃろこ)に行った。
(クッチャロ湖じゃあ無いよ)

屈斜路湖


白鳥飛来の湖だが、人っ子一人、一羽もおらず、無論クッシーもいなかった。

季節を外せば、こんなモノだろう。

それにしても、北海道の湖は水が綺麗である。

岸辺だと、水底が普通に見えるのだ。








屈斜路湖より摩周湖へ戻る途中、再びキツネを見かけた。

引き返して写真を撮ろうとも思ったが、怯えていたので止めて置く。

男は、優しくなくても生きてはいけるが、それでは人生つまらないのだ。

決して、面倒くさかったからではない。







それにしても、天気が良い。

霧の摩周湖とはよく言うが、霧など影も形も無い。
(写真にはキッチリ写っていたが)

早速、ツイてきたのだろうか。

風がえらく強かった事を、覚えている。


摩周湖第一展望台駐車場。

そこは有料なので、本来なら寄らない所だが、テント仲間にチケットを貰ったので、寄ってみた。

\100だけどね。

今日は霧もなく本当に天気が良い………あ、フィルムがもうない。

新しく買わなきゃ。


ところでさすが第一展望台と言うべきか、とても人が多かった。

有料なのに。

裏や第三の方には、そう人はいなかったのだが。

摩周湖



ともあれ、一度は行っておいた方が良い所なのだろう。

一度行けば十分だろうが。







阿寒湖に行った。

釣り人の姿が、チラホラと見えた。

たまの事だと遊歩道を散策したら、思わず一周していた。

とても、疲れた。

阿寒湖








アイヌコタンに、立ち寄った。

実は私は、アイヌ民族に常々興味があったのだ。

嘘臭く聞こえるが、本当の事である。

でも有料だったので、施設に入るのは止めた。


………本当に、興味はあったのだ。

阿寒湖アイヌ生活館


古い時代の家族4〜5名が生活出来るアイヌ民家を再現した小さな施設で、入館料は確か\300だった。




一息入れる為、『チキサニ』という土産物屋の中にある茶店に入る。

ポッチェイモとハスカップジュースを頼んだ。

他にも、コンブシトとかチボルシトなどがあったが、

どんなモノかが全く想像つかないので、止めておいた。

先の二点なら、何となくわかるし。


で、ハスカップジュースだが、ハスカップの味がした。

ジュースの中に実があったので、食べてみたら苦かった。


ポッチェイモは、要はイモであり、イモの保存食の事を言うらしい。

何と、十年持つそうだ。

十年前の物だったら嫌だなあと思いつつ、食べた。

なんと、イモの味がした。







北海道三大秘湖の一つ、チミケップ湖へ行く途中、鹿鳴の滝というのがあった。

鹿鳴の滝


この滝へ行く道は、細かったり急だったり脆かったり倒木が道をふさいでいたりと辿り着くのに苦労をしたが、その割に大した事は無かった。


………嗚呼、まるで人生。








北海道三大秘湖が一つ、チミケップ湖は、水が中々綺麗だった。

でも、三大
秘湖の癖に漁業組合があるのは、反則だと思った。

ここで釣りをするには、お金が必要という事である。

ホテルもあったし、そりゃないよと思った。

チミケップ湖




他の二つは、知らない。







帰り道が延々ダートで、えらく苦労した。
(約8km)

だから、舗装路に出た時は嬉しかった。

嬉しさの余り、
ダ―――ッと叫んだ位に嬉しかった。

擦れ違った車の運転手には生温かい目で見られたが、コケなくて本当に良かったと思う。







気付くと、18:30になっていた。

時間が無いので、帰る事にする。

何せホラ、寿司を食わねば。


何を隠そう、今日は『すしロード』という有名な回転寿司屋に、行くつもりだったのである。

その為に、昨日泊った開陽台キャンプ場にテントを張ったままなのだ。

近いから。


何たってホラ、誕生日だし。


回る寿司というのが、また素敵。







帰途の最中に、日が暮れる。

寒くて、暗くて、怖かった。

国道なのに街灯無いし、本気で真っ暗だったし。

信号も無いのは、有難かったけど。



根北峠にて、鹿に出くわす。

本気と書いて、マジと呼ぶが如き、ビビッた。

正直、本当に鹿が道路を横断するとは思わなかった。


聞いた所によると、鹿は横断途中に二輪なり四輪なりに出くわすと、

そのまま横切れば良いものを、何故か車の進行方向に逃げるそうだ。

本能的なものだそうだが、200kgが車にぶち当たるのだから、お互いタダでは済まない。

二輪だったら、たぶん死ぬ。

と言うか、絶対。


と、考えている傍から、二匹目の鹿が道路を横切る。

まさか、二回も出くわすとはッ!

伊達に、『動物横断注意』の標識は出ていない。

そう、思った。


以後、60kmの安全運転で走った。

怖いから。


事故らずに済んで、良かった。

ツイてる、ツイてる。







22:00。

本日のメインイヴェント、『スシロード』に到着ッ!





閉店21:00。



ツイて無ェーッ!!




本日の教訓。

計画は、余裕を持ってね。








こうして、20代最後の夜は、何時の間にか終わり、30代最初の夜は、ミジメに終わった。

繰り返すが、今日は私の誕生日。





………悲しいなぁ。






その10へ続く




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