」
吐き出すようにイリヤが叫ぶ。
「え……ええぇ〜!!?」
そう。
イリヤでは、士郎のブツを勃たせられなかった。
溢れんばかりの愛が、彼女にはある。
だが、テクが足りなかった。
実に足りなかった。
「全然勃たないのよ、シロウのアレが……だから、SEX出来なくて……
ねえ、どうして!? 何でよ!? 死に賭けた時って、却って勃つんじゃなかったのお!!?」
ヒステリックにイリヤが喚く。
けれど、それも当然だろう。
それだけ彼女は頑張ったのだ。
本当に頑張ったのだのだ。
だがいかんせん、テクが足りなかった。
とても足りなかった。
故に、彼女は決断した。
「……手伝って」
「ハイ?」
「だから、手伝って」
「ハイィ〜ッ!?」
大河は驚いた。
士郎のモノを勃たせるのを手伝えと、彼女は言う。
その行為の内容を考えれば大河が驚くのも無理はなく、拒否をしようと何ら責められるべき筋合いではないだろう。
しかし……
「仕方ないじゃない! ホントはわたしだって嫌よ、でも……わたしじゃ……駄目で……でも……シロウが……このままじゃ、シロウが……」
涙ながらに、イリヤが語る。
語る内容はアレだが、その真摯な姿が大河の胸を打つ。
何より、士郎の為だった。
士郎の為なら何でも出来るし、何だって出来る。
その言葉に、断じて嘘はない。
故に、彼女は決断した。
「……分かった。わたし、頑張る」
そして二人は――――
「嘘、そんな事するの!?」
「え、そんな事まで……」
「そんなトコまで、嘘ッ!?」
「……うわ、変な味」
「ふん、この程度で驚かないの」
「そうそう、そんな感じ……だと思う」
「わたしはコッチを……」
「もうちょっと、もうちょっとで……」
「やったあ!」
「よし、いくわよ……」
「イッタァ……ッ!」
「うわ、ホントに……」
「……」
「え、わたしも!?」
「いや、わたしは……」
「わたしは……」
「そうだけど……」
「けど……」
「……」
「……良いの?」
「……」
「いったぁ〜い!!」
――――破瓜の花を散らしたのであった
まる
悲しい夢を見た気がする。
とてもとても悲しい夢。
あれは一体誰の事だったのだろう……
窓から差し込む朝の陽射しで、衛宮士郎は目を覚ました。
日が昇って随分と経つのか部屋の中は眩しいくらいに明るく、士郎はぼんやりとしたまま、何とはなしに時計を見ようとした。
しかし、何故か動けない。
「……あれ?」
身体を起こそうとするのだが、どうも上手く起こせない。
まるで、自分の両腕に重石が乗っているかのようである。
不思議に思った士郎が右を見る。すると、
「……え?」
あり得ないモノが見えた。
ハハ、俺、疲れているのかな……
なんて感じで、士郎は現実から目を背けた。
ついでに実際に目を逸らし左を見た。そして、
「…………え?」
再び、あり得ないモノが見えた。
もう本気であり得ない、絶対にあってはいけないモノだった。
ハハ、俺、まだ寝てるんだよ。きっと、そうさ……
なんて感じで、士郎は全力で夢の中に逃げ込もうとした。
彼は固く目を瞑り、力の限りに羊の数を数える。
もっとも、すぐに耐えられなくなるが。
微かな期待を胸にして、士郎は再び目を開ける。
だが、現実は常に非情である。
目の前の光景は、これっぽっちも変わってはいなかった。
「ええぇ〜ッ!!」
士郎は絶叫した。
「う〜ん……」
「うるさいなぁ〜、何よぉ……」
その叫びで目が覚めたのか、両腕の重石がもぞもぞと動き出す。
しかし、士郎は動けない。
――――先に動いた方が殺られる。
先も何も相手はとうに動いているのだが、士郎は本気でそう思った。
だが、現実は常に無情である。
「あ……お早う、シロウ」
「おはよ、士郎……えへへ」
「うわあぁぁあぁ――――ッ!!」
士郎は魂消るような悲鳴を上げた。
だが、そんな悲鳴も何のその。
彼女達は、はにかんだ笑顔を浮かべながら声を揃えて言ったのだ。
『責任、取ってね』
ちなみに布団のシーツには、彼女達の純潔だった証が二つ、ハッキリと記されていたりする。
悲しい夢を見た筈なのに、今この瞬間その全てを忘れた士郎であった。
続く
2008/1/21
By いんちょ
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